扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)

 扁平上皮癌は、慢性的な刺激が気管・気管支に起こることにより発生しやすくなります。その刺激の原因として代表的なのがタバコです。扁平上皮癌の最大の原因は喫煙であり、発症の予防には「タバコを吸わないこと」、癌になってしまったら「吸うのをやめること」が重要となります。

 他の原因としてはアスベストやその他の粉塵などの職業暴露、間質性肺炎のような気道の慢性炎症をきたすような疾患でもこの病気になる場合があります。


 扁平上皮癌は、慢性的な刺激が気管・気管支に起こることにより発生しやすくなります。その刺激の原因として代表的なのがタバコです。扁平上皮癌の最大の原因は喫煙であり、発症の予防には「タバコを吸わないこと」、癌になってしまったら「吸うのをやめること」が重要となります。

 他の原因としてはアスベストやその他の粉塵などの職業暴露、間質性肺炎のような気道の慢性炎症をきたすような疾患でもこの病気になる場合があります。

 

 扁平上皮癌の初期は無症状です。少し進行すると、血痰や咳といった症状がでてきます。血痰は文字通り痰に血が混じることをいいます。咳は「かぜなどのよくある原因がなく、なかなか治らない」というのが特徴です。咳がずっと治らない場合は要注意です。

 扁平上皮癌は、気管支の比較的入り口の方にできるので、かなり進行すると気管支をつまらせてしまうことがあります。気管支がつまると、肺がつぶれてしまったり、分泌物が外に出せなくなることによる肺炎(閉塞性肺炎)を起こしたり、といったことになります。

病理学的特徴

 扁平上皮癌は、「化生(かせい)」という現象がもとで起こります。化生とは、もともとある細胞とは性質の違う細胞ができることを言います。気管支の場合、タバコなどの慢性的な刺激が原因となり、本来そこにはない扁平上皮細胞ができます。その扁平上皮細胞が癌となり、扁平上皮癌が発生するのです。

 

 扁平上皮癌は、角化や細胞間橋といった特徴的な構造を示す癌です。角化とは、皮膚のような特性、すなわち細胞の新旧が地層のように並び、古くなった細胞が死んでいく現象を言います。細胞間橋とは、細胞同士をつなぐ「橋」のような構造物を指します。また、そのような構造がなくとも、扁平上皮癌が持つ特別なたんぱく質のマーカー(免疫組織学的マーカー)を調べることで診断される場合もあります。

扁平上皮癌には、亜型があります。

  • 角化型扁平上皮癌 (Keratinizing squamous cell carcinoma)
  • 非角化型扁平上皮癌 (Non- keratinizing squamous cell carcinoma)

角化型扁平上皮癌 (Keratinizing squamous cell carcinoma)

 角化型扁平上皮癌は、角化、細胞間橋、癌真珠を認めます。角化や細胞間橋は先に述べましたが、癌真珠は角化現象の1つであり、染色すると扁平上皮癌の細胞の中にポツンと赤く丸く染まる構造物が見え、それがあたかも真珠のようにみえることから癌真珠と呼ばれています。

角化型扁平上皮癌(弱拡大)

角化型扁平上皮癌(強拡大)


癌真珠(弱拡大)

癌真珠(弱拡大)


非角化型扁平上皮癌 (Non- keratinizing squamous cell carcinoma)

 非角化型扁平上皮癌は、角化が存在しないか、角化がわかりづらい癌のことをいいます。時に他のタイプの肺癌との区別が難しい場合があり、特別な検査を必要とすることがあります。

 特別な検査とは、扁平上皮が持つ特別なたんぱく質のマーカー(p40、p63、CK5、またはCK5/6)があるか、他のタイプが持つ特別なたんぱく質のマーカー(TTF1など)がないか、を確認することです。

 

 非角化型扁平上皮癌は、角化型に比べ、予後が悪いとされています。それは、角化型扁平上皮癌に比べ、非角化型扁平上皮癌の方が低分化だからです。「分化」とは、正常の細胞に似ている度合いを示す言葉です。高分化であるほど正常の細胞に似ているため、予後がよくなります。しかし反対に低分化だと正常細胞の性質から癌細胞の性質がかけ離れてしまうため、予後が悪くなってしまいます。非角化型扁平上皮癌は、低分化であるため、予後が悪いのです。

非角化型扁平上皮癌(弱拡大)

非角化型扁平上皮癌(弱拡大)


p40 免疫染色

p40 免疫染色